香川大学教育学部特別支援教育 坂井聡研究室 sakalab-acc.com

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当然の抗議だと思います

0151120

茨城県知事 橋本 昌 殿

茨城県教育委員会委員長 小野寺 俊 殿

 

特定非営利活動法人DPI(障害者インターナショナル)日本会議

議長 平野みどり

 

茨城県教育委員会委員の発言に対する抗議文

 

 わたしたちDPI(障害者インターナショナル)日本会議は、障害の種別を越えて障害者が障害のない人と共に生きることができる社会づくりのための運動を行っている団体であり、北海道から沖縄まで89の団体で構成されている障害当事者団体である。特に障害者は生まれてはならない、という優生思想に対しては優生保護法の撤廃運動など、長年の間、闘ってきた。

 

20151119日、貴県教育委員会にて委員である長谷川智恵子氏が、県の教育施策を話し合う18日の県総合教育会議において、障害児らが通う特別支援学校を視察した経験を話す中で、「妊娠初期にもっと(障害の有無が)わかるようにできないのか。(教職員も)すごい人数が従事しており、大変な予算だろうと思う」「技術で(障害の有無が)わかれば一番いい。生まれてきてからじゃ本当に大変」「茨城県では減らしていける方向になったらいい」などと発言したとの報道があった。そして「舌足らずであった」と発言をし、橋本知事も「問題ない」との発言があったと報道された。これは障害者の人としての尊厳を根本から踏みにじる重大な問題発言である。噴飯ものであり、決して許されるものではない。私たちDPIはここに強い怒りと深い悲しみを込めて抗議する。また、その後の報道で「言葉足らずであった」とし、お詫びと共に発言を撤回し、さらに辞任を申し出たと聞くが、これで終わらせて済む問題では決してない。その根本にある、障害者は生まれてはならない、存在してはならないという優生思想の問題だからである。

 

長年の世界中の障害者による優生思想との闘いもあり、障害者の尊厳の尊重を原則とする障害者権利条約が国連で採択され、昨年日本も批准したばかりである。そして、条約の理念を国内法に取り入れた障害者基本法の第一条には「全ての国民が、障害の有無にかかわらず、等しく基本的人権を享有するかけがえのない個人として尊重されるものである」との理念が示されている。さらに、茨城県においては、県議会議員をはじめとする多くの関係者の多大なご尽力により、「障害のある人もない人も共に歩み幸せに暮らすための茨城県づくり条例」を昨年制定し、今年度より施行されている。まことに残念ながら、一連のやり取りは、条約や法律、条令の理念に真っ向から相対するものであり、とくに、条例づくりに尽力された方々のご努力に泥をぬるものである。優生思想をこの社会から取り除き、社会に啓発する立場の者が、旧態依然とした優生思想にどっぷりつかっており、その問題の認識すらないことに改めて強い怒りを覚える。

また、こうした人を任命し、それを擁護するような「(発言は)問題ないと考える」という知事の責任もまた重大である。すべての県民の尊厳を尊重し、差別を解消する責任を有する自治体の長の発言として非常に残念であり、見過ごすことはできない。

 

また、県の教育委員会の委員という立場の人が特別支援学校の視察のあとにこのような発言をしたことによって多くの人が傷ついた。視察に協力した当該学校の教職員の方々、障害のある子どもたち、その保護者の方々はこの発言をどのように受け止めただろうか。大きな悲しみと怒りであろうし、その心情は察して余りある。同県教育委員会が、障害者権利条約や障害者基本法、障害者差別解消法などの研修を行っていないのは明白であり、これも大きな問題である。

 

「堕胎がいいかどうか」ということと、「胎児を障害の有無で選別すること」は、一緒くたに考えていい問題ではない。障害の有無に関係なく、どんな命も等しく尊く、生まれてきてその一生を全うするのが人権である。今回の発言は、障害者に対する重大な人権侵害である。障害者を減らせと言っているのである。生まれてくるな、生きるな、ということではないか。

 

私たちDPI日本会議は、茨城県教育委員会と茨城県知事に対し、改めて強い怒りを持って抗議する。そして、これからも優生思想と全力を挙げて闘っていく。茨城県と同県教育委員会は、長谷川氏への処置を行い、その根本にある優生思想を排除する取り組みを私たち障害者と共に行うよう強く求める。そして、「障害のある人もない人も共に歩み幸せに暮らすための茨城県づくり条例」という条例の名にふさわしい茨城県づくりを求めるものである。

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コメント: 1
  • #1

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